桜えび
東名高速で由比サービスエリアの付近に来ると、チラチラと海岸に天火干しされ、ピンク色をした桜えびが見受けられる。
桜えびは体長4〜5pで、海中では透明だが、空気に触れると桜色に変わる。日本では駿河湾でしか獲れない。富士川や大井川が流入してプランクトンが豊富で、湾が急深なため、光を嫌い夜間浮上して捕食する桜えびにとって理想的な環境になっているからだ。
明治27年、夜の鯵漁に出かけた漁師が網に付ける浮き樽を忘れ、仕方なく網を深く沈めたところ、大量のえびが獲れた。その美しい色、味の良さが評判になり、漁が盛んになったという。
えびの一種。生きている時は、体が透明なサクラ色をしているで、この名が付いた。体の長さは4〜5pくらいで、雌は雄より少し大きい。クルマエビに近い種類で、皮が薄く、速く上手に泳ぐ。体の表面に150ヶ所ばかり発行する所があって、頭から尾のほうに順次連続的に光る。体のところどころがあちこち数秒間光ることもある。光は弱い緑黄色で、多数群がって光るが、その意味についてはまだよく解っていない。日中と月夜には150〜300mくらいの深いところにいるが、闇夜には70〜80mくらいの所に浮いてくるので、この時に2隻の船で「あぐり網」を下して採る。1尾の雌は1500〜2000粒くらいの卵を150mくらいの深さで海中に産み落す。卵からかえって翌年1月頃には4pくらいになり、その年の夏に卵を産み、一生を終えるので、寿命は1年である。
駿河湾や以前は相模湾でも獲れたが、特に、駿河湾の富士川の沖ではたくさん採れ(多い年には4500トンの産高)、このよに狭い場所でこんなに沢山採れるエビも採れる場所も他はない。桜えびは生のまま、また、ゆでて干したり、皮をむいてむきエビにする。干すと腹部が平たくなるが、生きている時は丸みがかている。味がよいので喜ばれ、よく名が知れている。
由比港の漁獲も、昭和40年代の製紙工場の排水によるヘドロ公害が起きた頃、漁民らの抗議行動を機に排水規制やヘドロ処理が進み、漁民らも乱獲を防ぐために禁漁期を設け、産卵期の夏を避け、春漁が3月下旬〜6月上旬、秋漁が10月下旬〜12月下旬、時間も夜半までとした。最近では漁獲0という日もままあり、年間漁獲量も僅か2000トン。
「生えび」は、ワサビ醤油で食べるが、鮮やかなピンクでプリッとした食感。「ゆでえび」はより彩り鮮やか。「佃煮」はカリッとした美味しさ。かき揚げ、食卓が華やぎまるで、春になったようで香ばしく、サクサク、凝縮された旨さだ。かき揚げといえば普通玉ねぎやゴボウだが、香ばしさでは桜えびにはかなわない。そして、「沖上り」は、桜えびのすき焼き(豆腐とネギと一緒に砂糖と醤油で煮るだけ)、昔の漁は朝方まで行われた。沖から上がり、船主の家で大鍋を囲んで身体を温め、疲れを癒した。
私が子供の頃は、太平洋沿岸での地引網では、一網かけると四季折々の旬の魚が獲れ、人と人畜が一緒になって引いても引き切れないほどの漁獲があったが、今は、すっかり様変わり。現代人は、やれ牛肉、豚肉、鶏肉と食生活が欧米化して成人病の心配まで、囁かれている。命を支える貴重な蛋白源として、美味しくて、身体にいい、そんな近海の「幸」をもう一度見直そう。そして、獲る漁業から育てる漁業を推進したい。